蜜 柑 山
沖を走るは丸屋の船か、
丸にやの字の帆が見える。
調子の良い「みかん採り歌」がすみきった晩秋の空気をふるわして、いずこともなくのどかに聞こえて来る。今登って来た方を振り返って見ると、幾段にも築き上げられた山畑には、蜜柑の木が行儀良く並んでいる。どれを見ても、枝という枝にはもう黄金色に色づいた実が鈴なりになっている。黒いほど濃い緑の葉の間から、その一つ一つが日の色にはえてくっきりと浮出ているのが見える。
又、少し登る。どの山を見てもどの谷を見ても蜜柑の木でないところはない。ふと見ると、ついそばの木の下では、かごを首に掛けた二、三人の男が、器用な手つきで蜜柑を採っている。さっきの歌の主であろう。あちらでもこちらでも、さえたハサミの音が「チョキン、チョキン」と聞える。
ふもとの川を白帆が二つ三つ通って行く。あれは港の親船へ蜜柑を運んで行くのであろう。小春日和の暖さにとけて、そこからも夢のように船歌が聞こえて来る。
【大正年間発行「尋常小学校国語読本巻十二」に掲載】
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有田地方は、400年以上の歴史を誇るみかんの産地です。
太古の昔からこの地方に口伝えにより、伝えられてきた歌が数々あります。今回、「有田市みかん資料館」のご協力によりここに掲載することができました。 |
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| なお、収録している唄を歌っておられますのは、木下安吉氏、川島友次郎氏、御前栄二郎氏、宮井亀楠氏の四名の方々です。 |
「みかん採み唄」 (江島節)
1.沖を走るは 丸屋の船か
丸にやの字の帆が見える
2.沖の暗いのに 白帆が見える
あれは紀の国みかん船
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ダウンロードしてお聞き下さい。(396KB)
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ほしかづき唄(乾鰯搗唄)
1.沖を走るわヤーレ 文左の船か
丸に紀の字のヨ 帆が見える
2.みかん船ならヤーレ いそいでおいで
江戸で買い子がヨ 待っている
3.こんど来る時やヤーレ 持って来ておくれ
有田みかんのヨ 枝折りを
4.紀州有田のヤーレ みかんでさえも
色付きや人手にイ まるはだか
5.有田みかんわヤーレ なぜ味がよい
にしんしめ粉ヨ こえにする
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みかん採み音頭
1.沖の暗いのに白帆が見える
あれは紀の国みかん船
2.江島唄うて向かいの山で
みかん採るのはわしの殿
3.今度いんだら持て来ておくれ
みかんは紀州の有田もの
4.有田みかんと道楽息子
色ではだかになりまする
5.有田よいとこみかんどこ茶どこ
娘やりたや婿ほしや
6.みかん船ならはよこげどんと
沖の暗いのは雨じゃその
7.祝い目出度の帆を巻き上げて
入るぞお江戸の品川へ
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