「はるみ」の栽培管理
 
1.来歴
 農林水産省果樹試験場興津支場において「清見」に「ポンカン」を交配して育成された交雑種で、平成11年11月に品種登録された
2.特徴
 樹勢は中、樹姿はやや立性、枝葉は密生する。新梢は枝の先端部付近の芽から複数発生し、節からは輪状に多数発生する。新梢が多数発生するため、それぞれの新梢は弱くなりがちである。葉の大きさは清見とポンカンの中間、厚さは薄く、新葉の緑化はやや遅い 
 果実の大きさは200〜300g、果形は扁球形で、ネックがでる場合もある。着色は10月に始まり、12月に完全着色する。果皮は薄く滑らか、浮皮になりやすく、剥皮は容易である。果肉割合は70%、糖度は12%、クエン酸は1.2〜1.5%、じょうのう膜は柔らかく、そのまま食べられる
 
 
3.穂木、苗木の確保
 穂木の導入に当たっては、ウイルスを保毒していないか慎重に確認する
 採穂する母樹の状態(果実肥大状況、春葉の展葉状況等)から判断する
 高接ぎ樹からの採穂は行わない
 苗木は健全な物を購入する
 
4.適地条件
 樹の耐寒性は特に問題はない。しかし、果実の後期肥大、果汁の減酸、果皮に霜当たり状の褐変が果頂部に出やすい等から、秋冬期温暖なところが望ましい 
 樹の生長を促進し、樹勢を旺盛にするため、土壌は耕土が深く、保水力があり、肥沃なところを選ぶ
 
5.苗木の定植・高接ぎ
 植え付けに際しては、植え穴の土づくり(客土、有機物投入)を十分に行う
 苗木の栽植間隔は4〜5m×2〜3mの並木植えとする
 高接ぎ樹では、接ぎ木後2年間は結実させないで、樹勢の回復を図る
 中間台木は樹齢の比較的若い樹を用いる
 八朔を中間台とした場合は、結実開始後の樹勢低下に注意する
 
6.整枝・剪定
 苗木・高接ぎ樹とも樹形は開心自然形に仕立てる。
 剪定は間引きと切り返しを併用し、随所に結実部と新梢部を混在させる
 間引きは結果母枝を間引いて着花・着果を調整し、残った枝梢への日照改善する
 切り返しは果梗枝や1,2年生枝を切り返して予備枝とし、強い新梢を発生させる
 
7.施肥・潅水
 新梢発生及び果実肥大は旺盛で一般的な中晩柑類の施肥に準じ、施用成分量は年間、窒素30kg/10a程度を春期、夏期、秋期の3回に分けて施用する
時期別の施用量は、春肥(3月 N:10kg/10a)、夏肥(6月 N:8kg)、秋肥(10月 N:12kg)程度とする
 潅水は梅雨明け後10月まで、十分に行う
8.結実管理
 大玉果生産のため、
 @強い結果母枝への結実を図る
 A有葉果を使う
 B摘果は早め・強めに行う
 C大玉果生産のための葉果比は80〜100
9.袋掛け
 果皮はポンカンに似て、霜当たり状の果皮生涯を果頂部に受けやすい。12月に降霜があると、樹裾部の果実の下向き部(果頂部)に霜当たりが発生し、商品性をなくすので、その前に、袋掛けし、果皮を保護する
  
10.収穫
 本県の成熟期は1月から2月と考えられる。早すぎると酸は高く、糖度は低く、じょうのう膜は硬く、本来の風味は味わえない
 遅れると、浮皮が進行し、じょうのう膜は破れやすくなり、果皮はもろくなる
 そのため、結実2,3年目は果実調査などして成熟期を把握し、適期に収穫するための基礎的な成績を蓄積する
 収穫果実は浮皮傾向で、果皮は弱いので、果実の取り扱いは丁寧に行う
 
11.予措・貯蔵
 収穫果実は軽い予措を行った後、短期間の貯蔵をする
 着色不良果や減酸の進んでいない果実は高温予措を行う
 果実は浮皮傾向で、変形しやすいので、短期貯蔵でも浅い箱に入れ変形を防ぐ
 
(和歌山県果樹園芸試験場 小沢良和) 


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