地勢・地質に応じた栽培

多様な地勢・地質の組み合わせに応じた栽培技術

有田地域は、地質で見ると三波川帯、秩父帯、四万十帯の3つに、地勢で見ると海岸部~内陸部、傾斜地~平坦地、有田川北岸~南岸に分けられます。

これらの多様な地勢、地質の組み合わせに応じた品種選定、栽培を行うことで、高品質で収益性の高いみかんを生産し、産地全体として「有田みかん」ブランドを確立してきました。

  • 日当たりの良さと 本来の果実特性を発揮する土壌条件を活かした
    三波川帯・有田川北岸河口部・階段園での 普通品種栽培や早生品種の完熟栽培
  • 適度な水分保持力と"紅の濃さ"を生む微量要素の豊富さを活かした
    秩父帯・内陸部・階段園での早生品種栽培
  • 減酸の早さと昼夜の大きな寒暖差による 色抜けの早さを活かした
    四万十帯・北向き園での極早生品種栽培

地質による特徴

地質による特徴

三波川帯

  • 主として結晶片岩からなり、Fe (葉緑素の生成を助長) ・ Ca (根の生育に必須) ・ Mg(葉緑素の成分)に富む
  • 園地の多くが南向きであり、果実着色は良好
河口部北岸(南向き斜面)の階段園での普通品種の栽培・ 早生品種の完熟栽培

秩父帯

  • 適当な礫を含んだ粘土質の土壌 + Fe・Ca・Mgに富む
  • 土壌の水切れの良さから、高糖度で果皮が薄い果実を生産できる
《海岸部》 有田川沿い階段園での普通・ 早生品種の栽培
《内陸部》 階段園での早生品種の栽培
《内陸部》 平坦地での極早生品種の栽培

四万十帯

  • 砂岩を母岩とする土壌は水はけが良好 果皮の着色促進
  • 昼夜の温度差の大きな北向き園地 果皮の“色抜け”が早い
海岸部・南向き階段園での早生品種栽培
北向き園での極早生品種の栽培

地勢による栽培

地質による特徴
山頂の雑木林は土壌の崩落・侵食を防止。石垣の階段園は雨水の流速を減速させる。
これらの仕組みにより河川環境を維持しています。

「海岸部-内陸部」における栽培

  • 海岸部 :
    長い日照時間 + 海の照り返し + 潮風のミネラル 果皮の“色抜け”が早い
    強い海風 果皮の“色抜け”が早い
  • 内陸部 :
    入り組んだ沿岸 黒潮の影響が上流に 川沿いでの産地形成

「有田川北岸-南岸」 における栽培

  • 北岸(陽地) :
    古くからの優良産地
    紀州みかんから温州みかんへの転換は北岸から進む 日当たりの良さに支えられた品種転換
  • 南岸(陰地) :
    日夜の温度差が大  果皮の色切れが進行  早生品種の有利出荷
    東側に園地を築き、午前中の日照を確保

「傾斜地」における栽培

  • 江戸時代~現在: 石積み階段園を造成 (出典:紀伊名所図絵(1812年))
    目的 : 排水性・日当たり・作業性・石垣の保温性の向上高品質果実の生産
  • 開墾時の岩石に加え、割石や麓より運び上げた河川の石を利用
  • かつては、日々の農作業の際に石を運び上げ、将来の開園・災害に備える
  • 思考錯誤を重ね、石積み技術を確立 明治~大正期には他のみかん産地に普及

「平坦地」における栽培

土壌水分が多く、糖度が上がりにくい

  • 土壤改良 (水はけの良い山土の投入・耕土下部への砕石の配置)
  • 高畝栽培
  • 苗木の定植時における植穴への瓦の設置

極早生品種 : 樹勢が弱い傾向 水持ちが良く、耕土の厚い平坦部での栽培により樹勢を維持

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